データドリブンな組織に何故なるのかについて改めて考えてみる
こんにちは。
データドリブンな組織ってそもそもなんの意味があるのかをしっかりとまとめておこうと思い経った機会があったので、まとめてみます*1。
思い立ったきっかけ
このところこのテーマについてよく考えるようになり、また必要だなと感じた背景として、最近データ分析系のProductに関わるようになったからです。
「自分が分析しないけど、分析をしてビジネス価値を出して欲しい」という立ち位置で諸々を考える必要があって、しかも彼らには昔から「データを元に意思決定をする以外の方法」で既に色々やっているんです。
この中で、
- データドリブンになることを押し付けることなく、自然とデータドリブンになることのメリットを知ってもらうにはどうしたらいいか
- 彼らの既存の方法を後押しする、もしくはリプレイスするようなデータ分析ってなんだろうか
というのを真剣に考えるようになりました。今、「データ分析の民主化」を社内で取り組まれているところは多いと思いますが、これをサービスとしてやっているようなものです。
会社では、僕たちはサービスを前提に考えますし、息を吸うようにデータ分析をします。でも、これを「今までやっていなかった人たち」がやるためには、「明確な動機」を感じる必要があります。
その意味で、手法やプロセスに注目が集まりがちなデータ分析について、「そもそもデータドリブンな組織になることのメリット・デメリットってなんだ」っていうのを改めて考えるのには意味があるなと思って、これをしっかりと整理しておきたいなと思います。
そもそもデータ分析で何をするのか
「データを分析」することとして、少し意味を広く捉えて、何をするのかを整理してみたいと思います。
アナリスト的な視点から
データ分析をして何がしたいのかというと基本的には以下のことかなと思います。
- 戦略・施策を作る
- 現状・問題点を把握する
- 仮説を作る
- 施策を作る
- 検証する
- 意思決定を最速化する
これは、アナリスト的な立ち位置でのものです。
メルカリの「「データが好き」だけでは終わらせないメルカリ文化とは? 経営とプロダクトを“数字”で支えるBI×MLマネージャー対談」という記事の中では、以下の三つがデータ分析を使ってできることとしてあげられていて、これについては表現は違えど、さほど間違っていないのかなと思います。
1. 知る・・・必要なデータが取得でき、可視化できている
2. 理解する・・・そのデータがなぜそのような数字になっているのかを説明できる
3. 予測する・・・そのデータからどういったことが起こるのかを予期できる
機械学習エンジニア的な観点から
エンジニア要素が入ってくると以下のこともできるのかなと思います。
- データを元に、新サービスを作り、売上を上げる
- データを元に、既存のサービスの効果を高め、コストを削減したり、売上をあげたりする
上記のようなことが「できる」のがデータ分析とします。
そもそも何故データ分析が必要なのか
「できる」ことはわかったとして、そもそも何故データ分析が必要なのかというのも改めて考えてみます。
いわゆる「時代がそういう波になっているか」というのも一つあるのかなと思います。データがより多く取れるようになって、それをさばけるようになってきたというのももちろんあると思いますが、上記のやりたいことをベースで行けば、それはエンジニア要素が入ってくる部分に強くメリットが出ます。もちろんアナリスト系のところでも、分析ができるようになるための環境構築などがやりやすくなったとかもありますが、それでも「動機」というところでは少し弱いです。
「やりやすくなったからやる」というよりも、データ分析の一番のところは「意思決定をより早くすること」にやっぱりあると思います。
- 意思決定をデザインする メルカリの躍進を影で支えるデータ分析チーム | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
- データ分析を民主化して、意思決定のすべての場にデータサイエンティストを | advanced by massmedian(アドバンスト) ちょっと先の価値観を見つけるメディア
上の記事にあるように、改善や戦略策定などを、「現状・問題点の把握から仮説立案、そこからの意思決定までの一連」をデータによってサポートし、「より意味のある意思決定を早くやる」というのがデータ分析が必要となる理由だと思います。以下は、引用文です。
プロダクト改善だけでなく、経営戦略や採用戦略など、さまざまな場面でデータ分析の力が必要とされています。すべての戦略には意思決定の場面があり、そこでデータサイエンティストは力を発揮することできる。
別に、アナリスト的なデータ分析をベースにしなくても、意思決定はいわゆる「勘・経験・度胸」で出来ます。
ただ、意思決定のプロセスを「早く・確実に・納得感を持ってする」ためには、つまり「より早く売上・コスト削減などにインパクトすることをできるだけ確度高く全体の納得感を持って意思決定する」には、
- 社内に意思決定のプロセスを共有する
- 個々人、チームでの意思決定を後押しする
などが必要です。これをやるにあたって、データとそれを使った分析があればスピードを早くすることができます。それぞれちょっと細かくみていきます。
社内に意思決定のプロセスを共有する
社内における意思決定のプロセスを共有する時に、「なんとなくこれかなって感じで」みたいな共有の仕方だとアレです。
また、「何故これになったのか」というのを「データ」という基準を元に判断できるようになるので、やりやすくなります。
最近社内でもRedashを使ってデータの共有とかをしているのですが、めちゃめちゃいいです。ちょっとした可視化や結果であれば、Slackでぺっと貼って終わりにできますし、Smallな分析であれば、可視化した図*2を貼ってコミュニケーションして意思決定というのも多いです。
結果をいち早く共有したり、レポートに使いやすい形にしたりなど、最近はそういうことができるようになってきています。
以下の記事でもあるように、「良かったのか・悪かったのか」をしっかりと答えられる分析をして、結果をいち早く共有することが大事なのですが、これがデータ以外だと、多分説明のためのロジックをパワポでゴネゴネ作って、社内の政治を色々やってととても大変なのかなと思います(すみません、やったことないのでイメージですが)。
- 大げさな分析資料はいらない。メルカリの「意思決定」を支えるデータアナリストの役割 | SELECK [セレック]
- hikaruの分析語り①分析とはひとことでいうと◯◯◯である|Hikaru Kashida|note
- hikaruの分析語り②分析で大事なことは水曜日のダウンタウンに学べ|Hikaru Kashida|note
意思決定のプロセスをデータだけで簡潔にできるのは、とても便利だなと思います。
個々人、チームにおける意思決定を後押しする
こちらのメルカリの記事でも紹介されていますが、個々人・チームにおける意思決定を後押しするというのは、データだからこそできることだと思います。
意思決定をする時に、「AかなBかな」って思って悩んで議論している時間とかって結構長いと思うのですが、これをいち早くやるには、意思決定を早くやる必要があります。これをサポートする立ち位置として、データ分析を使おうという文脈です。
メルカリ社内では、データ分析の部署を「BI(Business Intelligence)チーム」と呼称している。そのミッションは「意思決定力のMAX化」。あくまで意思決定の支援に役立つことを最優先業務とし、決して「データを使って何かやる」ことが目的ではない。たとえば、機械学習などは別部署がおもに手がけている。
「データを使って何かやる」ことが目的ではないと書かれていますが、定量と定性の両方を大事にしながら、目標に対して意思決定をしていくという感じだと思います。以下の記事では、そのあたりの具体例とかが書かれています。
- メルカリのプロダクト企画と分析の裏側 〜 数字に逃げるは恥だが、役に立つ 〜 #mercariday - mercan(メルカン)
- プロデューサー、エンジニア、コンサルタント……多様なバックグラウンドを持つメルカリのデータアナリストって何者? - mercan(メルカン)
- メルカリのデータ分析チームの極意を公開──成長も意思決定もとにかくスピード感重視! | 【レポート】アナリティクス サミット2018 | Web担当者Forum
意思決定支援をデータを元にやって、「えいやっ」に対して「それだったらいけるよね」というのを裏付けることで、意思決定を良いものにしつつ、より大胆な決定をやっていくという感じが素敵です。取り扱う分野が増えていくのも頷けます。
その意味で、データだけを頼りに意思決定をするのではない、「データインフォームド」という考え方もあるみたいで、以下の記事で解説されています。
こちらに日本語訳の記事があるのですが、その中では以下のように紹介されています。
データ・ドリブンな意思決定はデータが意思決定の中心で、主要な、もしくは唯一のインプットです。どのような施策を打てばいいのかデータのみに頼ってしまいます。
データ・インフォームドな意思決定は、様々なインプットがある中で、データは重要なインプットであるという位置づけです。ユーザーに対してあなたはどういった価値を提供しているのかを深く理解するためにデータを使うのです。
データを重要なインプットの一つとし、意思決定をする。まさにサポートという点と、それもあるからガツンといけるって感じでしょうか。いずれにせよデータ分析で意思決定をサポートすることができるのは事実だと思いますし、それだけで十分でないのは理解できます。
以下の記事とかは「At Netflix, Who Wins When It’s Hollywood vs. the Algorithm?」という記事を紹介した記事ですが、ここであげた内容とは別視点で、データだけで意思決定をすることができない状況を象徴する感じだと思います。
意思決定をしっかりと後押しする、それはデータならではのことと思います。
データドリブンな企業になるために必要なことは何か
ここまでで、以下の二つを見てきました。
- そもそもデータ分析で何をするのか
- そもそも何故データ分析が必要なのか
では、データを元に意思決定するデータドリブンな企業になるために必要なことは何かを改めて考えてみたいと思います。
多分、一言でまとめると「データ分析の民主化」を行うことだと思いますが、じゃあ「データ分析の民主化ってなんだよ」って思います。まだしっくりきていない部分もありますが、データ分析の民主化を行うに当たって、以下のことが必要だと思っています。
- データを見て意思決定をするというトップの意識
- データにみんながアクセスして活用できるような環境づくり
これも見ていきたいと思います。これらについては、以下の記事に事例も合わせて乗っているので、めちゃめちゃ参考になります。
- 「データはお客さんの声なき声」メルカリ、DeNA、グリー、楽天のアナリストが語る分析手法 - ログミー[o_O]
- 成長企業には「最高の分析チーム」が不可欠 メルカリ、DeNA、グリー、楽天の組織作りとキャリアパス - ログミー[o_O]
データを見て意思決定をするというトップの意識
以下の記事をみて、「うむうむ」と思っていたのですが、ぶっちゃけトップがそうじゃなかったら、そうじゃないですよね。
もちろんトップだけがそうじゃだめだと思いますが、まず「データを元に意思決定をしよう」という気持ちがなければ終わりです。
トップの意識があった上で、社内におけるデータを元に意思決定をすることに対する納得感の醸成はとても大事だと思います。
データがないシチュエーションとかでは、普通にデータなしで意思決定をするしかないですが、そんな時に「くっそ、これどっちやねん」とか「だいたいこの辺りじゃないかなぁと思っているんだよねぇ」ってなって、しかもその中に「これはデータをしっかり見ればわかりそう」があると、本当にデータが欲しくなります。
それでも、めっちゃ色々考えて、色々見ていくと「ここが問題点かなぁ」っていうのがだいたいわかってくると思うのですが、それをデータなどなしに他のメンバーに共有するのは並大抵のことではありません笑。
その意味で、「問題点ってここかな」という感覚を組織で作る、とかも大事だと思います。つまり後でも言う、「みんなが常に数値を意識できるような環境を作り」もとても大事な取り組みの一つだと思っています。
データにみんながアクセスして活用できるような環境づくり
様々な企業の取り組みをみていると以下のようなところをやっているようでした。目的に根ざしたデータの取得をしっかり行なっていると言うのがある前提ですが、
- よく見る数値のDashboard化
- データのアクセス周りの整備(中間テーブルなどへのアクセス、テーブル定義の整理)
- SQLのクエリなどをGithubなどで管理し、みんなが見れるようにする
- データ分析の社内勉強会の開催
- ChatToolなどとの連携
- 常時数値が見れるような、PUSH型の情報提供
あたりはどこもやっている様子でした。データ分析をみんなが様々な粒度でできるようにしていくと言うのが大事なんだなと思います。
これらをやった最終形態はどんな風になるのかと言うのを最近見つけました。ちょっと長いですが、「成長企業には「最高の分析チーム」が不可欠 メルカリ、DeNA、グリー、楽天の組織作りとキャリアパス - ログミー[o_O]」の記事にある以下の文章はとても心に刺さりました。
B氏というすごい優秀なプロダクトマネージャーがいるんですけど。B氏はもともとエンジニアで、そこからGoogleのプロダクトマネージャーになって、自分でもガリガリ分析ができて、1人でPDCAサイクルを回しながら、必要な場合はコードを書いたりコードレビューをするという、めちゃくちゃすごい人材なんですよね。
彼に聞くと、Googleのプロダクトマネージャーってけっこうそういう感じで、いわゆる分析の専任が隣にいなくても、ある程度分析やPDCAサイクルを自分で回せるから、ぜんぜんやっていけるという感じなんですよね。
この話を聞いたときに、僕はすごい後悔したというか、「えー、じゃあ俺らいらないじゃん」みたいな感じになったんです。
本当にGoogleはすごいなと思っていて、最終的に1人でPDCAサイクルを回せるというのは一番最強だと思っているので、本当に最強な分析チームが行き着く先というのは、分析チームがいなくて、B氏のようなプロダクトマネージャーだらけの会社なのかもしれないと思っています。
それは1個の解かなとは思っているのですが、ただ自分はこの分野の専門家もしくは専門部隊のマネージャーとして、それをある程度くつがえせるような、本当に分析の専門部隊だから出せるような価値をつくりたいと思っています。
こんな風に、ありとあらゆる人が、1人でPDCAを回していけるようにするのがやっぱり最終形態なのかなと思います。またアクセスだけできてもそれを元に意思決定を進めていくと言うのが自然とできるようになっていくのが必要なので、徐々に進めていくしかないのかなと思います。
まとめ
なんか最近アクセスしている情報源に偏りがあって、だいぶ影響された感じの記事になってしまいましたが、どの企業も同じように考えていて、それを会社ごとにカスタマイズしているのかなと思います。
こちらの本とかも、これをしっかり考えるきっかけでした。この本は、複数人の著者が1章ずつ担当してバラバラに書いたそうなのですが、複数人の著者がいくつかのテーマで、共通のことを話しているのをみて、自分でも考えてみたいなと思い、今回まとめてみました。
来年から頑張っていきたいなと思います。